第3期竜神杯第1局 観戦記Part1「逆巻きの台風」

一般社団法人日本四人将棋連盟 観戦記初参加3名、期待の新鋭が集う第3期竜神杯。その第1局が幕を開けた。
今回の棋譜の符号は全てユコタ準会員を基準とする。


観戦記


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第1局の対局者はユコタ準会員赤坂アマアカギ準会員Kentoアマ
ベテラン準会員が向かい合わせに座った。準会員vsアマの激戦が予想される。

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63歩34歩47歩76歩43歩36歩67歩74歩54歩29飛
全員が飛車の横効きを通す。やはり四人将棋においても最初に大駒の活用を急ぐのが良いだろう。一番乗りで仕掛けたのはKentoアマ。上家を攻めるのは繋ぎにならないので良くないとされているが、上手くいけば対面の赤坂アマと協力してユコタ準会員を攻め落とすことができる。ただし過激手には注意したいところ。

繋ぎとは?


下家(自分から見て右側の人)に王手をかけると、間髪を入れず自分に手番が回ること。四人将棋では時計回りに手番が回るが、王手がかかったときにのみ王手をかけられた人に手番が飛ぶ。そこで自分から見て右側の人に王手をかければ続けて自分の手番が回ることになる。

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56歩87金72金27金18飛65歩62玉16玉38銀88銀53玉
やられてばかりではいられないユコタ準会員。Kentoアマに反撃の矢を放つがここで赤坂アマに銀をぶつけられ挟み撃ちされる。忙しいユコタ準会員を尻目にアカギ準会員は天守閣を築く。

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38金同飛79銀51飛27銀98飛86玉
Kentoアマは銀をユコタ準会員の飛車にぶつけ更なる猛攻を仕掛ける。一見過激手かと思われたが赤坂アマに王手をかけながら飛車を逃げる手があるのでセーフか。赤坂アマは持ち駒の銀を使うのを惜しんだか玉を上げて回避したが、これだと94の金が浮き駒になってしまう。ただしユコタ準会員にその金を拾う余裕があるかは難しいところだ。

過激手とは?


理不尽な集中攻撃を防止するために定められた禁じ手のこと。詳しくはこちら

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52金
Kentoアマとしては是非とも38銀を打ちたいところだが、これは過激手になりそうだ。というのもユコタ準会員には79の銀を取る余裕を与えられるべきだからだ。何故38銀打のような自然な手が過激手になってしまったのか?それはKentoアマが上家を攻めたからだろう。上家を攻めた場合、対面の相手と協力して攻める構図になりがちでそうなると過激手が生まれやすい。その場合は対面の相手に攻めの権利を譲渡した方が良いだろう。下家を攻めるのが常識となっている世界で秩序に歯向かった者へのペナルティである。

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17銀96金75玉61飛37銀85金同金
暗黙の了解を察したのかKentoアマはじっくりと銀を自陣に打ち陣形を整える。これはユコタ準会員に28金と打たれる筋を消している。さてユコタ準会員は79の銀は取らずに赤坂アマに金飛交換を挑む。興味深いことにKentoアマがユコタ準会員を攻めて逆向きの風が吹いたことにより、盤上全体に上家を攻めようとする逆向きの渦巻きが発生している。いや、ただ一人アカギ準会員だけは風ニモ負ケズ岩のようにどっしりと構えている。

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82銀
傍観に徹していたアカギ準会員が遂に動き出す。赤坂アマとしては右からは飛車が、左からは銀がじわじわと近寄ってきて苦しいように思える。しかし実はこの82銀は赤坂アマにとってはむしろ有難い手助けとなっている。もしアカギ準会員が銀をぶつけなければ、ユコタ準会員が93飛成と龍を作りにくるかもしれない。赤坂アマにとってもアカギ準会員にとっても龍に自陣近くで暴れられるのは困るだろう。四人将棋ならではの間接的なサポートである。

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25玉79金82銀同金
Kentoアマは手堅く自陣を手入れしながら対岸の小競り合いを見守る。ユコタ準会員はようやく79の銀を外す。この手はいつか必ず指さないといけない。もし赤坂アマに69銀の一手を指す余裕を与えてしまうと、同玉で49の金のヒモが外れKentoアマに49飛と走られ一気に寄り形になってしまうからだ。赤坂アマはアカギ準会員と銀交換する。仮に他の手を指したとしてアカギ準会員が93の銀を取るとも限らないのだが、他人依存の不確定要素は排除しておくのが妥当だろう。

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27銀96銀97金打64歩47銀
Kentoアマが着々と理想形を組み上げていく。2枚の銀が縦に並ぶ姿は銀多伝と呼ばれ、隙が少ない好形だ。ユコタ準会員は赤坂アマへ割り打ちの銀を放ち寄せを試みるが、97金打がぴったりの返し技だ。こうなるとユコタ準会員は収拾がつかなくなる。左辺の戦いは一段落していたはずなのだから赤坂アマに手を出すのではなくKentoアマに視点を移すべきだっただろう。アカギ準会員はじっくりと64歩を突く。ここは91飛も面白そうな手だが飛車同士が向かい合うと摩訶不思議な展開になりやすく遠慮したのだろうか。

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97飛同金
赤坂アマの金盾に対し、思い切って飛車を切ったユコタ準会員。87銀の方が自然に思えるが同金と応じられると87に金が残り玉の逃げ道が塞がれてしまう。

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65歩
アカギ準会員はじっと歩を突き越す。この歩を突いてしまうと将来的に64に駒を打ち込まれる手が気になる。ではこの歩突きの狙いは何なのか?もちろん一歩得する意味もあるが、ユコタ準会員がもうじき詰まされるのを見越して向こう岸にと金を作り残骸を回収するのが主な目的だろう。四人将棋では完全に先に見通すことはできないが、曇りなき眼でそれぞれの思惑を読み取ればある程度未来を予測することは可能だ。高度な心理戦である。

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38銀上39金打96金72金
Kentoアマに銀を引っ掛けられ、いよいよユコタ準会員は三途の川が見えてきた。金を打って粘るが詰まされるのは時間の問題だろう。赤坂アマとアカギ準会員はじっと金を自陣に引きつけユコタ準会員の最期を看取る。

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49銀同金
Kentoアマの49銀に対し、ユコタ準会員は同金と応じたがこれだと次に58金で即詰みになってしまう。ただし同玉の方が良いかは微妙なところだ。たしかに同金なら58金で詰んでしまうがKentoアマとしてはこの手は形が悪くあまり指したくない手だろう。逆に同玉なら38金で形よく攻めを続けられる。つまりKentoアマ目線で考えたときに嫌な手を選ぶことで、相手が詰みを見送ってくれる可能性に賭けたのだ。

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86玉66歩
いよいよ第一の犠牲者が出てきそうだ。赤坂アマは玉を右へと移動する。ユコタ準会員が詰まされるのを見越して右の空間へ移住する計画だ。これを機と見たアカギ準会員は満を持して歩を66へ伸ばす。狙いはもちろんと金を作ることだが、先ほどまでなら赤坂さんに66の歩をタダで取られる可能性があった。しかし今なら仮に赤坂さんに歩を取られても同飛と歩を取り返すことができる。

さあいよいよユコタ準会員に最後の審判が下る。果たしてKentoアマは58金でユコタさんの息の根を止めるのか、それともーーー

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58金
はい打ちました。打たれちゃいました。ユコタ準会員、無念の最下位である。竜神杯は4位のみ獲得ポイントを減らされるルールのため、最下位を引いたユコタ準会員は一気に優勝が厳しくなる。残り3局での彼の巻き返しに期待したい。余談だが今のところ一度も手番が飛んでいない。盤上全体に逆巻きの台風が現れ、繋ぎが全く発生しなかったからだ。
偶然にも58手目に58金で詰まされるユコタ準会員であった

さて残るは3人の戦いとなるが、ここで一旦筆を置こう。続きの観戦記は次回に書く予定だ。



執筆者


藤川智之プロ初段

対局動画


Part1/4

Part2/4

Part3/4

Part4/4












posted by 一般社団法人日本四人将棋連盟 at 18:45Comment(0)観戦記